多くの作家にとって、小説を書くことは自己表現であり、同時に自分への挑戦でもあります。一つの小説を最後まで書ききる行為には、作品を完成させる以上の意味があります。その重要性をいくつかのポイントに分けて解説します。
作家としての自己成長
一つの作品を完成させることは、作家としての成長に繋がるものです。小説を書く過程でプロットを構築し、キャラクターの成長を描き、テーマの掘り下げて発展させるというプロセスを経ることで、多岐にわたるスキルが身につきます。物語の構成を最後まで創り上げることで、次のようなスキルが培われるのです。
ストーリー創出完成度の向上
小説を書いている過程で、読者を惹きつける展開の運び方や、クライマックスへの伏線の張り方を学ぶことができます。しかし、創作途中で未完成の状態のままだと、これらのスキルを最大限に身につけることは困難です。途中で書けなくなった作品は時間を置いて見直してみてください。新しい視点から書き直すことができるかもしれません。
書きかけの原稿を放置しておくのはとてももったいないものです。今まで何回か途中まで書いたものが気に入らなくなって、一年ほどそのままにしていた短編の作品がありました。しかし、忘れかけていたものを思い出し、再度見直してテコ入れをしたところ、新人賞に応募してもいいほどに仕上がったので、G文学賞に応募し第三次選考まで通過したことがありました。
自己管理能力の向上
小説を最後まで書くことには、計画性や自己規律が求められます。特に執筆のモチベーションが落ちる時期にも、この自己管理を継続することで、作家として求められる自己管理能力が養われます。
作品を形にする達成感
一つの小説を最後まで書き上げることで得られる達成感は、作家の自己肯定感や創作意欲を大いに高めます。この達成感は、次の作品の執筆への意欲にも繋がり、継続的に創作活動を続ける原動力となるのです。
“完了させる” ことの意味
完成した作品を手にしたとき、自分の中で一つの区切りをつけられることができ、次に進む心の余裕が生まれます。逆に、未完の作品が多いと、「途中で投げ出してしまう癖」がつきやすくなる恐れがあります。
読者との共有の喜び
完成した作品は、他者に読んでもらうことで初めてその価値が発揮されます。読者からのフィードバックを受けることで、自分の表現力の伝わり方、つまりどの部分に改善の余地があるのかを知ることができます。電子書籍出版などを行った場合は、レビューをもらえる機会があるので、積極的に活用しましょう。
知りあいに作品を読んでもらって、かつ感想をもらえるととても嬉しいですね。出版した作品を買って読んでもらったことがありますが、その人は読み終えた本を必ずSNSでレヴューをするようにしていて、率直な感想をもらって感激したことがありました。
ストーリーテリングの全体像を理解する
小説を最後まで書き終えることで、物語の全体像を掴む力が養われます。序盤から中盤、クライマックス、そして結末までの構造を捉えることは、特に初心者の頃から意識しておくべき成長の一歩です。
序盤と結末の繋がりを学ぶ
多くの小説では、物語の序盤に提示されたテーマや問題が結末で解決されるように構成されています。一貫性のある物語を描くためには、この全体像を意識しながら執筆することが重要です。最後まで書ききらなければ、この一連の流れを体感することはできませんので、意識しておきましょう。
キャラクターアークを完成させる
物語の過程で生じた登場人物の変容、精神的な変化をキャラクターアークといいます。キャラクターがどう成長し、変化していくのかは小説の重要な要素です。最後まで書くことで、キャラクターアークが効果的に描けているかを検証することが可能になります。
出版やプロとして踏み出す第一歩
小説を最後まで書き上げて初めて、その作品は「商品」としての価値を持つようになります。その後に、電子書籍や一般書籍の手法で出版することが、作家としてのキャリアを築く第一歩となります。書き上げたら、多くの読者に手に取ってもらうためにも、出版することをおすすめします。
編集や投稿の基盤
書き上げた小説は、出版社や新人賞への応募、あるいは何らかの形式で出版していく素材となり得るものです。未完成のまま放置してしまった作品などは、このようなチャンスを決して得ることができませんので、見直しをしながらでも少しずつ完成させることが大切です。
ポートフォリオの充実
完成した作品は、作家としてのポートフォリオとして機能していきます。複数の完成作品があれば、それだけ多くの可能性が広がります。次々に出版を重ねていけば、世に出たあなたの作品は実績として強みとなり、仕事のスタイル・思想などを読者に理解してもらうことができます。
出版者を通して本を出版することはお金がかかるものですが、今は自分でKindleから出版ができます。自ら出版手続きする際には経費はかかりません。出版した本は作家のポートフォリオとして世にでることになります。著作を出し続けているということで、作家としてお仕事のオファーなどが入ることがあります。
インタビューや講演の依頼などがよい例です。以前に、わたしはラジオの出演依頼でインタビューを受けたことがあります。
作家としての自信を育てる
最後まで書ききることで、作家としての自信がつきます。この自信は、執筆活動の中で多くの困難に直面したときの支えとなります。
自分の力を信じる基盤
書き上げた経験を持つと、「またやれる」という確信が芽生え、それが次へのステップへ進む原動力となります。この確信は執筆活動を長く続ける創作意欲につながるため、非常に重要な資質です。
他者への説得力
完成した作品は、自分の能力を客観的に示す手段にもなります。そのため、作家として他者に信頼されるための実績づくりの基礎として発展させたいところです。一つひとつ作品を着実に書き上げて世に送り出すことで、著作物があなた自身の思想などへの説得力を生み出す可能性があります。
確かに途中で行き詰まって書けなくなってしまった作品などは出てくるものです。そういう作品は時間を置いて、モチベーションの高い時に全体をもう一度見直すようにしていました。そして、表現方法を変更して全体的に書き改めてみたところ、気に入った作品に仕上がったとことがありました。
創作の喜びを知る
小説を完成させることは、執筆の楽しさや喜びを実感する瞬間でもあります。物語を作り上げる楽しさは、最後のページを書き終えた瞬間に最高潮に達することでしょう。
創作のプロセスを愛する
書き上げる中で困難や壁にぶち当たることもありますが、完成後には「やり遂げた」という満足感に変わります。創作のプロセスでは的を射た表現を思いついたり、面白い展開に持ち込めたときなども、喜びを感じるものです。そのプロセスもぜひ楽しみながら書いてみてください。
次の挑戦への原動力
完成の喜びは、次の作品を生み出すエネルギーになります。小説を書くことそのものが自己実現の一つとなって、作家の成長の一助なるのです。
「成長」を常に念頭に置いて書いていくようにしましょう。言葉の表現も少しずつ洗練されていきますので、更に磨きのかかった技術を身につけることができると思います。
まとめ
小説を最後まで書ききることは、作家としてのスキルを磨き、自己成長を遂げ、次の作品へと繋がる大きな一歩です。未完成の作品では味わえない達成感や学びが、完成によって得られます。また、作家としてのキャリアを築く上で、完成した作品は必須の要素となります。すべての創作活動の基盤として、「書ききること」を大切にしていきましょう。
コメント