まず、この記事では初めて小説を書きたいと思っている方に小説家が心得ておくべきことと小説ジャンルについて、大切なことをお話ししたいと思います。
あなたはなぜ小説を書きたいと思われましたか? 自身の創作・表現した作品を多くの方に読んでもらいたいからでしょうか? あるいは作家という職業にあこがれていて印税生活をしたいからという方もいらっしゃるかもしれませんね。小説家もただ伝えたいことを伝えるだけではなかなか読んでもらえることはありません。しっかりとしたポリシーと信条をここで養っていきましょう。
小説家の心構え「小説を書く意味を意識する」
一般に書かれた小説は、読者はどのような想いで読むと思われますか。これも様々なケースが考えられることと思います。例えば、
●物語を読むことがとにかく好きだから。
●嫌なことがあったので、読書でもして気をまぎらせたい、早く忘れたい。
●自分の好きなジャンルの物語を読んで楽しみたい。
●人生に行き詰まりを感じてどうしていいのか悩んでいる。悩みを解決して一発逆転を狙いたい。何か人生を教えてくれるような小説はないものか? 等々……
必ず読みたい理由があって、そのページを紐解こうとしているわけです。つまり、書き手側から見ると、
何かを知りたくてページを開く人を勇気づけたり、人生のどん底にいるのを救ったり……ということが小説の役割としてあるわけなのです。
作家にあこがれたり、外見だけで判断して作家になるのは簡単です。大切なのは、作家の仕事の本質をしっかりと理解することが求められてくることになります。
かつての文豪川端康成氏は自著で次のようなことを述べています。
「文藝というものは、本質的には作者の側と読者の側と等分な、真の発見への意志を持っていなくては成り立たない」
「初めから作家というものをいいものだと思ったり、文学者になるために上手な小説を書きたいと思ったりすることから始まる文学修業は、本当のものとは言われまい。たとえそういう念願から出発した作家修行であっても、その人が本当に作家として一家をなすには、上手になることよりも、生活して本当の苦悩に直面する勇気を持つということが第一の資格であろう」
川端康成 『小説の研究』から
一番目の文章では、まさに作者が伝えたいことを伝えるだけで終わってしまいますと、小説の役割が果たされてはいないことになります。 ようするに、自己満足だけで終わってしまいますと、誰も読んでくれない悲惨な結果を見ることになるわけです。
このことを踏まえて、読者の人生の救いとなるような「読んでよかった。励まされた」というレビューをもらえるような小説を書く意識がとても大切なのです。
では二番目の文章はいかがでしょう? 小説家も「過去の人生経験が非常にものを言う」ということが言えます。何度も言いますが、あこがれだけで書いても、余程の評価を得ない限り、いいものは生まれ出てくるものではありません。
あとからも詳しく説明しますが、自身の得意なこと、言葉の表現の独自性などを前面に出していくことが大切な要素となってくると考えています。
以上の重要な点を書く前の意識として、頭の隅っこに、というよりも潜在意識のなかにすり込まれるまでになると素晴らしい心構えになります。今後の活動にかなり期待が持てるようになります。
「なんだか、いきなりハードルの高い話だな」って、思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。ここがわかってくると、実は後々楽になります。作家として立つ土台の構築になってきますので、しっかりとした基盤づくりをしておきましょう。
一冊の創作ノートを持っておくと便利
これから小説を書く作業に入っていくうえで、イメージをどんどん膨らませていくことになりますが、物語を書き進める途中で、湧き上がった多くのアイデアを記録しておく必要があります。ぜひ、1冊の創作用ノートを用意して構想を練ることをおすすめします。
スマホのメモ機能でもA5サイズ程度の紙のノートでも構いません。半蔵はちなみに両者とも使用しています。デスク上で書く準備や執筆をしている時には、紙のノートに直接メモするのが便利ですね。見返すのも楽だと思います。
作業をしていない時にも実はアイデアを思いつくときがあります。外を歩いていたり、他の環境に置かれている時間に、ノートにメモする余裕がなかったりするものです。そんなときには、スマホのメモにササッと記録しておいて、あとで確認するようにしましょう。
要するに、
「アイデアを思いついたときには必ず記録をしておく」
いつでもどこでも記録する習慣をつけておくことは、とても大切です。「あとでメモすればいいや」と思っていると、その記憶は脳内で短期記憶に分類されてしまい、時間が経つにつれて必ずと言っていいくらい忘れます。それが自分の気に入った抜群のアイデアだと思っていたときは、あとですごく後悔するものです。半蔵も何度も泣きをみたことか……
「その場で記録する」ことはとても創作を発展させるうえで有効な手段となりますので、面倒がらずに行うようにしましょう。
自分に合うジャンルを探す
あなたはこれからどのような小説を書こうと思っておられるのか決めていますか? それとも入口のジャンルでどうしようか迷っていらっしゃるのでしょうか? もし、書きたいジャンルの方向性が大筋で決まっているのであれば、この部分は先に進んでいただいても結構です。
書きたいと思う小説ってすでにどんなイメージをお持ちでしょうか? すべてのジャンルを書ける間口の広い人ってなかなかいませんから、やはり自分の性格にあった小説を書くべきです。
芸術性の高い純文学をめざしたい人が、無理して大衆文学の探偵ものを書いても、いいものは完成するとは思えませんし、空想科学小説を小さいときから読むのが好きな方が、いきなり何も知らない歴史小説を書こうとしてもなかなか書けるものでもありません。
まずは自分で得意であったり関心のあるジャンルを見つけ、これからずっと書いていきたいジャンルとして意識していくようにしましょう。あせらなくても大丈夫です。恐らく、どう決めるかは個人でいろいろな判断があると思います。この先の大きく左右する話になりますので、納得のいくまで考えてみてください。
今まで歩まれてこられた人生経験や一定の専門知識などをお持ちで、何をどのように表現したいかが、ご自身の頭の中にかすかに想いがあるようでしたらしめたものです。
では、ジャンルとして挙げられるもの次に挙げてみます。
小説のジャンル
主として犯罪に関係する秘密が、論理的に解明されていく過程に主眼を置いた小説
(コトバンク:デジタル大辞泉)
科学的知識をもとにした、空想的な筋立ての小説。科学小説。空想科学小説
(コトバンク:精選版日本語大辞典)
歴史上の事件・人物・風俗・など、史実を素材として構成された小説
(コトバンク:精選版日本語大辞典)
中学生や高校生、大学生をメインの登場人物として、恋愛・友情・将来への葛藤などといった若い頃に経験する出来事や経験にフォーカスした小説
(アミューズメントメディア総合学院:小説家業界情報局)
男女間の恋愛を主題とした小説
(コトバンク:精選版日本語大辞典)
10代から20代の読者を想定した、娯楽性の高い小説
(コトバンク:デジタル大辞泉)
児童を読者対象とした文学の総称。童話・少年少女小説・童謡・児童劇など
(コトバンク:デジタル大辞泉)
ユーモアやサスペンスを生かした落ちをつける、きわめて短い小説。空想科学小説(SF)や推理小説に属するものが多い。
(コトバンク:精選版日本語大辞典)
例えば、子供の頃からサッカーをしてきたのなら、それをモチーフにして物語を拡げていきます。株に詳しいのなら、証券会社を舞台にしたり、ユーモアを交えたければショートショートに挑戦するのもいいでしょう。
当然に、かつて経験したこと、持ち合わせた詳しい知識を書くことは、相当にあなたの強みになりますので、得意なことがあるのであれば、ぜひ活用することをお勧めします。
一つの分野の知識が豊富であるということは、奥の深い本質的なお話を書くことができるはずです。あなたのよいところが遺憾なく発揮できると思いますので、自分にぴったりのジャンルとして、あとは純文学なのか大衆文学でいくのかを決めてから書き始めてみてください。
わたしは若い頃から、ヴァイオリンを学び始め、後にチェロに転校するとともに、作曲を学び、その後はクラシック作曲家として、作品を多く発表してきました。その結果、音楽界の事情もわかるようになり、言葉でも音楽を伝えたい想いが募ってきたのです。
クラシック音楽好きの方や業界の方々の知りたいことなどを物語にすることにし、ジャンル・テーマを音楽に特化して、書くようになりました。読み手と書き手の双方に新たな発見ができるように配慮して書いています。
物語執筆の流れ
ひとつの小説を書き上げるまでには、いくつかの過程を経ることになります。ここでは、簡潔にその流れを示すことにします。それぞれの項目はこれからの章で詳述していきます。
主人公、他の登場人物、舞台環境等の設定
まずは主人公をどのような人物にしていくのかを設定していきます。そのあとに、別の登場人物を頭のなかで整理して洗い出し、概ね人物像について、イメージしておいたほうがいいでしょう。まだ、舞台をどこの場に設定するのかについても、今の段階で場所(土地柄や特定の場)だけでも考えておくようにします。
どの人称で書くか
●「わたし」「僕」「俺」「おいら」「あたい」などを主語にして書く文章 → 一人称
●第三者がその事実を描写して書く文章 → 三人称
●「あなたは……」「君は……」を主語にして書く文章 → 二人称
このうち、よく使われるのは上二つの一人称と三人称です。それぞれにメリット・デメリットがありますが、”物語の設定”の記事で詳しく解説していきたいと思います。
プロットを組み立てる
主人公、登場人物、舞台設定のイメージがあらかたでも創造できましたら、次はいよいよ物語のストーリーの構成を考えていくようになります。
物語を実際に筆を動かして、ストーリーの場面の単位で考えていきます。いろいろな手法がありますが、あまり手をかけずに新たに発想した主人公の動き、他の登場人物の接点などを組み合わせ、喜びや哀しみ、危機・事件などを盛り込み、人生のどん底や頂点の場面を創作ノート、またはパソコンに書いていきます。
人生の山や谷の場面を個別に設定していき最後につなぎ合わせ、最終場面までどんな展開にしていくのかを構想していく作業がプロットづくりになります。
場面は順番に考えても結構ですし、まったくこま切れの状態でイメージしていても構いません。その場合はあとでつなぎ合わせて、物語として組み立てを行います。
執筆作業
物語のあらすじがプロットによって概ね構成ができましたら、いよいよ書く作業に入ります。時間も要する作業になってきて、個人差が出てきますので、あくまでも自分のペースで書き進めることが最も大切です。
概ね順調に筆が進んでいくことと思いますが、一日に何文字書き進めるのかも、個人によってまったく異なります。
わたしは比較的筆が遅いほうです。別の仕事もしながら執筆していますので、一日平均2時間程度で、1500字から2000字くらいのペースです。日によって書けたり書けなかったりという状況も当然に生じてきます。
推敲する
最後まで書いたら、推敲をしなくてはなりません。初めから読み直しをして、文脈、誤字、てにをは、表現などを修正していきます。
最低でも、3回は推敲するべきで、時間があればそれ以上するようにしてください。推敲のポイントはまた別の記事で解説します。
完成 小説を書き終えたら
ようやく苦心の末に書き上げた小説。そのまま放置していても、何の意味もなしませんので、他の人が読んでもらうようにします。
●家族や恋人、友人など、身近な人に読んでもらって、感想を聞かせてもらう。
●自分のSNSに発表して多く人の目に行き届ける。
●今は小説投稿サイトがインターネット上で充実しているため、アカウントを作って投稿する。
人に読んでもらって意見をもらうのって、結構恥ずかしい想いをしますが、ここは「恥も外聞もない」精神で積極的に人に読んでもらうほうが自身の力になってきます。人の意見って、自分の気づかないことを言ってくれますから、結構、意識して聞き入れると血になり力となって実力につながります。
ここまでの流れが理解できましたら、ひと休憩です。少しづつ前進していますので、しばらく気分転換でもしてから、よろしければ次の必要な項目にお進みください。皆さんの書きたいけど、書き進められない悩みがこれから少しずつでも解消されていくことを期待しています。
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